2007/12/15

ひと様の軒先を借りてのスパムなSEO

よくもまあ目ざとくこんなのを拾ってくるなあ。Web 屋のネタ帳より『CNET「読者ブログ」上でSEO業者が検索エンジンスパムな記事を何本も書いている件』。多くは画像で説明されているのでリンク先をご参照あれ。
こんなのがSEOを語ろうとは片腹痛い。
まあ、騙っていただく分にはよいのでは(苦笑)

CNET 読者ブログの書き手の質は相変わらず、ということなのだろうけど、ひと様の軒先をお借りしていることについて感謝のかけらも感じられない輩は意外に多いもの。せっかくなので、筆者の知っている例を挙げてみよう。

三井物産VI×IA(都合により伏字)のE見という方(同じく仮名)がMarkeZine の編集者ブログへ投稿されたこちら:「 第6回 SEMのROIを高めるロングテールキーワード」。文中に何回か出てくる「SEM」というワードにリンクが設定してあり、リンク先はすべて「http://www.vixia.co.jp/sem/ 」。こちらはスタイルシートで隠す、などの姑息な手段はとらずストロングスタイルで勝負している。

SEM のリンクに注目

この会社は特段にSEO を手がける業者という訳ではなく、米国で3番手の検索連動型広告のサービスを日本に持ってきて失敗したり、同じく米国で実績のある入札管理ツール(というか実際はもっと高度だけど)を日本に持ってきたりしている。まあSEO に関しては素人ということで大目に見るべきなのかもしれないけど、先ほどのページのリンク元なんかを見ると、やはり身の程を知っていただく必要はあるのかもしれないと感じられる。

  Yahoo! で「link:http://www.vixia.co.jp/sem/」を検索

看板の商社名が泣きそうな体たらくだが、行為の是非に関する判断は読者諸賢にお任せする。

2007/12/13

デジタルフォレスト(Digital Forest )の奇怪な増資



アクセス解析ツール「Visionalist (ビジョナリスト)」を提供するデジタルフォレストが第三者割当増資により4億円を調達、というニュースが、一部サイトで昨日ひっそりと掲載された。同社のリリースによると、
2007年11月30日払い込みにて、第三者割当増資で総額4億円を調達しました。これにより資本金は、4億3,570万8,000円となりました。今回の増資で、経営基盤の強化を図るとともに、デジタルフォレストの主力製品である『Visionalist』の機能強化や、Webマーケティングの新規サービスの創造とグローバル展開に取り組んでいきます。
とのことなのだが、不思議なことに、割当先がどこにも記載されていない。GMO インターネットがヤフーの支援をあおぐ、というなかなか論評しがたいニュースの陰で、ニュースバリューの根幹が欠けた状態にもかかわらず今回の件を果敢に記事化した媒体のひとつ、ベンチャーナウでは多少つっこんだ取材を行っており
今回の増資に至った経緯については「事業のグローバル化と従来サービスの強化、新製品開発に向けて今回の増資に至った。今回の第三者割当増資については発表している以上のことは公開できないが、これに伴う大株主の変更はない」(同広報)と説明。増資後も「どこかの子会社になったということはない」(同広報)と話した。
と報じている。ただ、デジタルフォレストの会社概要ページにはそもそも株主の記載がなく、どういった株主構成となっているのかは不明のままだ。好意的に解釈すれば、開示することで当該株主の競合にあたる一部顧客の流出が想定される、などの事情があるのかもしれない。某「同窓会サイト」での事件等、うがった見方はここでは割愛する。

なぜ非公開企業の増資についてこのように取り上げるのかといえば、やはり同社が「Visionalist (ビジョナリスト)」の提供元であるためだ。Omniture のSiteCatalyst(サイトカタリスト)やGoogle Analytics などに対抗しうる国産アクセス解析ツールとして、妙なトラブルなどの事態は避けていただきたいし、何より顧客のオンラインマーケティングの中核にあたるアクセス解析データを預かる企業として、振る舞いを再考する必要があるものと感じられた。

*12月22日追記
本エントリー投稿の4日後、12月17日に割当先や割当額などの詳細が公表された。割当先はすべてベンチャーキャピタルで、今回の増資におけるデジタルフォレスト社の企業価値評価額は約30億円、とのこと。さまざまな意味で興味深い。当初の「発表している以上のことは公開できない」というコメントはなんだったんだろうという気がしなくもないが……

ところでこのひどいコラムはいったい……?

さて、デジタルフォレスト社はここ最近、執筆や講演等を精力的に行っている。舶来でない、日本のオンラインマーケティング事情に即した啓発活動という意味で期待は大きく、たとえば翔泳社「MarkeZine 」の主催したイベント「MZ Day 2007 」でのモバイルに関する講演などは実際に評価も高かったようだ。

ただ、japan.internet.com に掲載された一連のコラムはあまりにレベルが低く、目を覆わんばかりだ。たとえば、
ページビューをビジネスの言葉に置き換えるならば、それは“売り上げ”である。
ページビューという指標の落とし穴
そんなわけはない。せいぜい店舗であれば“来店”、法人営業なら“パンフレットを持ち帰ってもらった”くらいが妥当なところだろう。あるいは、
その Web サイトのコンバージョンは、社長が主催するセミナーに訪問者を申し込みさせることなのだが、(中略)「どんなキーワードで出稿するのですか?」と尋ねてキーワードのチョイスを見せてもらうと、ビッグワード(ビッグワードとは「転職」「中古車」など月間10万件以上検索されるキーワード)が多い。
広告代理店も知らないリスティング広告の罠
なんといってもタイトルがひどい。実際にこんな間抜けな代理店が存在しうるのか疑問だが、取引先のとある代理店が低レベルだからといって、それを一般化されては話が進展しない。すべての広告代理店は抗議すべきではないか。
4マスプロモーションは(中略) Web のように、その広告を見た人の行動を完全にトラッキングすることは不可能であるため、何をきっかけにその製品を知り、購入しようと思い、実際に購入に至るのかの可視化が難しい。そこで、テレビ CM の効果を可視化しようということで現れたのが、テレビから Web へと誘導させるタイプの広告だが〜(後略)
「続きは Web で」というあのテレビCMは本当に効果的だったのか?
メディアによって特性が異なり、得意・不得意があることは真っ当なマーケターにとっては周知の事柄であり、それぞれの強みを生かしながらキャンペーンを構成する中で、テレビからWeb サイトへ誘導することを狙っただけの話では? 可視化が主目的でWeb に誘導ということはあり得ないし、すべてが可視化されるとは誰も思っていないだろう。

世の中にこれよりひどい記事が蔓延していることは否定しないが、デジタルフォレストの「チーフコンサルタント」がこのレベルというのは情けない。猛省を促したい。

2007/12/04

「緑のgoo 」とYahoo! JAPAN の自殺対策

環境goo 」など、環境への貢献を地道に続けているgoo が、11月28日から緑のgoo 」という「地球にやさしいサービス」を期間限定で実施している。(経由:WWF )



企画の趣旨としては「期間中、“緑のgoo”の検索画面にアクセスしていただき、通常のウェブ検索にご使用いただくことで、運営者のNTTレゾナント株式会社が得る運営収益の15%相当を環境保護団体に寄付するという企画です」というもの。トップページの「gooの木」は検索回数に応じて成長するとのことで、アイデア自体は「ecotonoha(エコトノハ)」に近い。ブログパーツを配布するなどのしかけが今風といえるかもしれない。地味だがよい取り組みだと感じられた。

*12月5日追記
コメント欄「匿名」氏のご指摘にあるとおり、「緑のgoo 」自体は2007年8月から実施されているものであり、第1期(2007年8月〜11月)にFoE Japan(Friends of the Earth Japan)への募金・寄付を行った後に、11月28日よりWWF を対象とした活動に入っているということであった。本文中の文言を一部修正するとともに、ここに追記する。

Yahoo! JAPAN の自殺対策

こちらは積極的な対策というより、「自殺の名所近くに生命の大切さを呼びかける看板を立てる」ような取り組み。プレスリリースなども出ていないらしく、取り上げている媒体が少ないようだが、個人的に大事だなあと感じたニュース。
ヤフーが「自殺サイト」対策を導入(時事ドットコム)
ヤフーは30日、「自殺サイト」を閲覧しないよう働き掛ける機能を同社のポータルサイトに導入すると発表した。ポータルサイトの利用者が「死にたい」などのキーワードで検索すると、「自殺は防ぐことができる」などのメッセージが現れ、ロゴマークをクリックすると、精神保健福祉センターや「いのちの電話」などの相談窓口を掲載したページが開く仕組み。
「いのちの日」である12月1日の午前零時に開始されたそうだ。試しに「死にたい」と検索してみた結果がこちら:


「自殺は防ぐことができる ためらわずに、助けを求めることが、何よりも大切です」とのメッセージとともに、自殺予防総合対策センターへのリンクが表示されている。目的がはっきりとしないまま、自分の気持ちを検索ボックスへ打ち込む人、というのは一般に想像されるよりも意外に多いものだ。毎日、何人かがこのリンクをたどって自殺を思いとどまることになれば、それも知られざる社会貢献と言えるのではないか。

#それにしても「死にたい」で表示される広告は、関連性が低いか、信頼性に難があるのではないか。広告審査の方々にはがんばっていただきたい。こちらの苦情はオーバーチュアで正解である。